腕組みをし落ち着かない様子で周りを俳諧するバンガ。

思い出したようにに近づき、
いきなりその髪をグイッと掴みそのまま力任せに上へと持ち上げる。

痛みに顔を歪ませながらも相手を睨みつける、しかし悔しさに声すら出せなかった。




He won't listen to me silently a kiss




「バルフレアを倒した後一緒に始末しようと思ったが・・・」

「―ッ」

「いい顔してンな、高く売れるんじゃないか」

近づくその顔はヒュムよりも大きく、尖ったような指先がの頬をスゥーとなぞる。
より一層嫌悪感を露にし歯を食いしばった。


重荷になるくらいならいっそ・・・・

そう思った。


なのに、遠く青い空に私は幻を見てしまう。


違う、でも、、、見間違えるはずが無かった。。。。きっとあれは


「―バル・・・フレア」

「!?何だって」

「どうして・・・」

そんな訳がないと自分に言い聞かせようとする、自ら嫌だとその手を拒んだのだ。

なのに否定すればする程それを望んでいたんだと思い知った。

は唇を噛み、軋む身体に鞭を打つように抵抗する。
相手の腰に差していた小さなダガーを奪い取りそれを髪にあてがうと思いっきり引っ張った。


「−・・・ッ・・・!」


ザリザリと音を立て千切れる髪、そして身体は離れ下へと落ちていく。


水色の空へと風に巻き上げられた糸のような髪がキラキラと輝き舞う。
その景色を見た私が次に目にしたのは彼の横顔。

早風のように現れ、いつか乗せてくれたエアバイクから身を乗り出し私を救い上げた。

!!」

「・・・・・・・・」

「バカ野郎がッ・・・」

謝ろうとした言葉は乾ききった口では声にはならず、
自分を支える力もなくの体はそのままバルフレアの胸の中に倒れていった。










街外れに着陸するなりバルフレアはの体を抱き上げ後ろの席に連れて行こうとする。
しかし顔を顰め脚を抑える
その仕草に目線がいくと太ももは赤く腫れあがっていた。


「――ッチ」


自然と出た舌打ちは誰に対しての怒りか。
それに耐える様に目を瞑り胸の前に上げた掌に意識を集中させていく。


周りの空気が変化していくのを感じ、はバルフレアの袖を力なく引っぱった。


「必要ない、の」

「・・・・・・・・・」

「止めて、、、」

「―・・・・・黙れよ」


今更何を言っているんだ。

彼女の言葉を無視して発動した魔法は光の粒子となって優しく舞い降りる。

それを受け止めようと出した掌を見つめは、いつもと違い細い声で呟いた。



「効かないの、それに―使えない」



肌に触れ、取り込まれているのに、
口元や腕に出来た傷も、腫れた脚も何も治る事は無かった−


「−・・・どうしてだよ」



魔法とアイテム。
その後ろ盾が一つしか無いは死へのリスクが高まる。
だから、こうなる事を極力避けてきたのに、それを招いた自分。


、お前」


あぁ、そうか。


「・・・私」

痛いのは傷じゃない、そんな顔をするあなたを見たからなんだ。。。


「バルフレア、、、ありがとう・・・」


そう口にし笑って見せる。ごめんなさいとは言えない、助けてもらったんだから。
それでも目線を逸らし無言で俯いてしまったのは、
私を見つめているバルフレアに耐えることが出来なかったから―



「やめろ、もう」


「―・・」

「甘えじゃない。迷う必要ないだろ」

「・・・・・」




だからこの手を取れと、差し出された掌。

躊躇している私にかけられる言葉はあまりにも優しすぎて、
心が罪悪感で蝕まれ首を横に振り拒絶を繰り返す。



「優しく、、、しないで」


もうこれで助けられたのは二度目。
バルフレアが居ないと生きていけないのではないかという依存、これ以上頼ってしまうのが怖い。

重力に引かれ雫となった悲しみはバルフレアの手の上にポタリと落ちた。






「指先だけの約束だろうと俺は守るさ」


カチャンと地面に青いガラス瓶が落ちる、突然強引に顎を上に向けられ強いられる口付け
逃れようと必死にもがくとより強く重なり合う。


「ッぅ――・・・ン」

「・・・・・・」

バルフレアの口から流された液体を拒む事はできず自分の喉がそれを受け入れ通過していく。
強いハーブの匂いと触れる唇の熱さに意識が遠のいていく。


「拒否しても俺が何度だって助けてやる」

頬を優しく包むように添えられた手、互いの目線が絡み合った。



「下らない事は考えるな」

「・・・・・・」

「自分の限界知ってるんだろ、だったら俺を受け入れろ」

「―!!、、」

、俺の・・傍にいろよ」

「・・バル、フレア」



そっと頭を撫でる優しい掌、互いの鼻先を付け合せバルフレアはの瞳を見つめ、
「泣かせて悪かった」と詫びる言葉を口にした。

もうバルフレアの魔法で全ての傷が癒えてしまっているのに
私の言葉など聞いてはくれない彼の唇が今度は深く重なった―





、お前が好きだ・・・」